学生フリーペーパーの祭典、「Student Freepaper Forum」という催しがある。
SFFと称される全国規模のこのイベントは、フリーペーパーをつくる学生が一堂に会して交流する、毎年恒例の行事だ。
昨年はそのプレイベントで、フリーペーパーに関わりがあるメディア業界の方をゲストに迎え、話を聞く機会があった。
そのときゲストの方から言われた言葉。
「学生フリーペーパーなんか滅びればいい」
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まじかよこの場で言うのか…と衝撃を受けたことを覚えている。会場に集まっているのは全員フリーペーパー制作者。ケンカを売っているようなものだ。
発言したのはかっぴーさん。いまは漫画を描いている人で、学生時代に『PARTNER』というフリーペーパーを創刊した方だ。
ビビりながらも「どうしてそう思うんですか」と聞いてみた。
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「フリーペーパーとか、学生団体がキライで。目的がないやつらが。『イベント主催して何百人集めました〜!』って、それだけじゃ意味ない」
「オレはフリペを終わらせようと思って『PARTNER』をつくってた。他が真似できないクオリティで黙らせようと思って。だからいつか、そういうものができて滅びればいいと思う」
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…一字一句同じとは言えないけど、確かこんな感じのことを言っていた。
かっぴーさんが言おうとしていたこと、半分は納得できる。
頭数だけを気にした、目的がない学生団体の集客は、ときには集められる側がすごくむなしい思いをする。
「こういうイベントはすごいと思うけど、結局何を体験させたかったの」とか、「呼ばれたから来てみたけど、内輪感が強くて楽しめない」とか。
そういうことを指して「目的がない」って言ったんだろう。フリーペーパー制作も、つくるだけで満足していたらだめ、ということ。それはわかる。
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でもかっぴーさん。たとえこれから先、どれだけ最高のフリーペーパーが発行されたとしても、学生フリーペーパーは滅びないと思うんだ。
それを越えたいって思う人たちが、きっと次々に現れるから。
最高のフリーペーパーができればできるほど、下の世代の起爆剤になると思う。
というか、最高のフリーペーパーなんて決められない。
企画ネタと取材と編集とデザインと熱量が、フリーペーパー制作における要素だ。
どれに重きをおくかでまったく違う出来になるし、中にはそのうちの1つしか持ち合わせていないものもある。それでも成り立ってしまうのがフリーペーパーだ。
何が評価されるか、読む人によって全然違う。何が最高か決めるのは読み手個人だ。
となると、おそらく「黙らない層」が確実に出てくる。誰かが「こいつはまじやべーよ、これ以上のもんは無理だよ」って言ったとしても、「そんなんクソじゃん?」って生意気に切り捨てる層が。
私たちは、あんまり謙虚でも大人しくもない。
だから学生フリーペーパーは、滅びないよ。
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私にとって、かっぴーさんのこの発言は発破をかけてくれたかたちになった。
今年もSFFが始まる。
「滅びればいい」と言われて1年、私たちは反骨精神の塊みたいなフリーペーパーを3誌持って、会場に向かう。
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